始末屋 妖幻堂
---これは、ここの姐さん方を味方につけたら、案外上手くいくかもしれない---

 小菊のことだって、むしろ好意的に見ている。
 裏の遊女全員を味方につければ、裏事情は筒抜けだ。

---そだ。いっそのこと千さんに、裏に登楼してもらおうかな。したらそこで、詳しい話もできるし---

 狐姫が聞いたら、激怒しそうな計画である。

「あたしさぁ。何かあの子、懐かしいような気がするんだ」

 一人の遊女が、ぽつりと言った。

「記憶にあるわけじゃない・・・・・・と思うんだけど、何か・・・・・・懐かしいんだよ」

「皆、家族があったんだし、一緒に暮らしてりゃ、そんな気になるさ」

 他の遊女が、事も無げに言う。

「そう・・・・・・だと思うんだけど。う~ん・・・・・・」

 なおも首を捻る遊女は、納得いかないという感じだ。
 こういうとき、呶々女は歯痒い気持ちになる。
 千之助や牙呪丸なら、何らかの方法で、簡単に気になることを暴けるのではないかと思うのだ。

 実際は、千之助はともかく、牙呪丸にそのような能力があるかは、はなはだ疑問なのだが。
 牙呪丸に関しては、『ヒトでない』という点で、特殊能力のようなものがあると思われがちだ。
 ただ単に、片割れへの欲目かもしれないが。
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