始末屋 妖幻堂
「まさか・・・・・・。せ、千さん、まさか、都に女房がいるのかい・・・・・・?」

「・・・・・・色は、いるぜ」

 にやりと笑う千之助に、冴は何とも言えない表情になる。
 『色』は確かに女房ではないし、妾を囲うことは、珍しいことではない。

「そ、そんなの・・・・・・ただの恋人だろ? あたしはちゃんと、千さんの身の回りのお世話だってできるよ」

 『色』というのは、もっぱら身体の関係のみで、そういった日常の生活には関与しないという印象だ。
 故に、己の家でなく、妾宅に囲う。
 冴もそう思っているのだろう。

 千之助は上体を起こして吹き出した。
 冴は、女房として連れ帰って欲しいと言っているのだろうか。

「生憎、その辺は不自由してねぇ。俺っちの色は、家にいるからなぁ」

「い、家?」

 冴が目を剥く。

「家って、千さんの家かいっ?」

「ああ。何せ遊郭の太夫を引っ張ったもんだから、まぁすっからかんになっちまってな」
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