始末屋 妖幻堂
「女子は、あっという間に干涸らびてしまうし、屈強な男はそれなりに体力はあるけど情緒がないし。男はどうしたって欲望が先立って突っ走ってしまうからねぇ。美味しくもない男にあんまりまとわりつかれても困るから、都度『気』と一緒に記憶が曖昧になるようにしないといけないし」

 面倒なんだよね、と言う里に、千之助は合点がいった。
 里が、家の下男・下女を食っていたのだ。

「そういうことかい。あんたは、ヒトの精気を喰らうのかい?」

 病になって暇を出された者はいても、里の家で死んだ者はいない。
 直接肉体を喰らうわけではなく、内部から侵されていったのだろう。

「そうね。私はヒトを惑わし喰らうのが、何より好きだからね」

---やはりな・・・・・・---

 千之助は、腰の巾着をそっと押さえた。
 先程の岩山の上の祠から持ってきた小さな剣。
 あの像は、羅刹天だ。

 だが像は『空(から)』だった。
 宿っていたモノが、抜け出していたのだ。
< 189 / 475 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop