始末屋 妖幻堂
「その、おかしくなった女子たちも、結局村から消えてるな。あんたが人知れず食い尽くしたのか?」

 壁にもたれかかって言う千之助に、里は意外に、きょとんとした。

「そうなんですか? 家から出た後のことなんて、特に気にしてませんよ。私のことを誰かに喋ったって、そもそもおかしくなっちまってるのに、誰も信じませんよ。食われてるから、そう長生きもできないしね」

 あれれ、と千之助は首を捻った。
 一連の事件と里は、微妙なところで線が途切れているようだ。

「ところで何で、家族にゃ手を出さなかったんだ? そういう気持ちは、あんたにもあるのかい?」

 里が食っていたのは、あくまで家族以外の者だ。
 彼女が千之助の考える通りのモノなら、真っ先にまず長を喰らうような気がするが。

「ちょっとした恩返しといいますか。私も初めはね、自分が何か、わかってなかったんですよ。ほんのちょっとの間でしたけどね。でもまぁ、初めに拾い上げてくれた恩があるから、太一郎様は後回し。冴は・・・・・・何故でしょうねぇ」

 ふふふ、と笑いながら、里は千之助の着物の内側に手を突っ込んだ。
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