始末屋 妖幻堂
「あの子の明るい無邪気さが、可愛いのかもしれませんね」

「初めはあいつ、あんたに反抗的だったのにか?」

「このわたくしに反抗する、その素直さが面白いのですわ。恐れを知らないといいますか。・・・・・・何だか最近はその面白味もなくなってしまいましたし、そろそろあの子も、いらないでしょうかねぇ」

---冴も食う気か。何とかしてやりてぇが---

 世話になった恩もある。
 だがやはり、下手に連れ帰る訳にもいかない。
 悩んでいるうちに、里の手は千之助の帯を解きにかかる。

「このように若い男など、本当に久しぶり。一気に干涸らびてしまうかもしれませんわ、ごめんなさいねぇ」

 千之助の腹に舌を這わせながら言う里が、ふと動きを止めた。
 彼の下腹部に、大きな傷が走っていたのだ。

「・・・・・・あら、意外。随分な古傷のようですけど、かなりなお怪我をされたようですわね」

「ふふ。俺っちは、いっぺんおっ死んでるのさ」

 里が初めて、訝しげに千之助を見上げる。
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