始末屋 妖幻堂
ほとほと困ったような顔で、千之助は部屋の隅に置いてあった袋から取り出した練り香を、行灯に放り込んだ。
香の香りが部屋に充満してから、千之助は冴の浴衣を直してやった。
「すまねぇな。けど、妙な種を宿すわけにもいかんだろ」
呟き、さらりと冴の頭を撫でる。
その優しさに、狐姫はまた嫉妬する。
「さ、さっさとその娘、追い出しちまいなよ」
しっしっと手を振る狐姫に、千之助は苦笑いを返す。
「香で眠らせたから、朝まで起きねぇよ。こいつが俺のところに忍んで来るのぁ、ここの旦那は承知だし、別にここで寝てたっておかしくねぇ」
狐姫の眦が吊り上がる。
千之助は慌ててぶんぶんと片手を顔の前で振った。
「ち、違ぇよ。確かに忍んで来られたのぁ初めてじゃねぇが、何もしてねぇ。とっとと香で眠らせたぜ。前にも言ったろ。俺っちがお前さんに、嘘付くわけねぇだろうが」
いつも冷静な千之助とは大違いだ。
この千之助がこのように取り乱すのも、狐姫が相手だから。
やはり、千之助にとって狐姫は特別なのだ。
「それに、こいつを部屋まで連れて行くのぁ、俺っちにゃちょいと難儀だ」
「旦さん、非力だもんね」
ちくりと嫌味を言い、狐姫はぷい、とそっぽを向いた。
香の香りが部屋に充満してから、千之助は冴の浴衣を直してやった。
「すまねぇな。けど、妙な種を宿すわけにもいかんだろ」
呟き、さらりと冴の頭を撫でる。
その優しさに、狐姫はまた嫉妬する。
「さ、さっさとその娘、追い出しちまいなよ」
しっしっと手を振る狐姫に、千之助は苦笑いを返す。
「香で眠らせたから、朝まで起きねぇよ。こいつが俺のところに忍んで来るのぁ、ここの旦那は承知だし、別にここで寝てたっておかしくねぇ」
狐姫の眦が吊り上がる。
千之助は慌ててぶんぶんと片手を顔の前で振った。
「ち、違ぇよ。確かに忍んで来られたのぁ初めてじゃねぇが、何もしてねぇ。とっとと香で眠らせたぜ。前にも言ったろ。俺っちがお前さんに、嘘付くわけねぇだろうが」
いつも冷静な千之助とは大違いだ。
この千之助がこのように取り乱すのも、狐姫が相手だから。
やはり、千之助にとって狐姫は特別なのだ。
「それに、こいつを部屋まで連れて行くのぁ、俺っちにゃちょいと難儀だ」
「旦さん、非力だもんね」
ちくりと嫌味を言い、狐姫はぷい、とそっぽを向いた。