始末屋 妖幻堂
「何より旦さんに会いたかったし」

 ぺと、と千之助に引っ付いて言ったかと思えば、次の瞬間にはキッと顔を上げて千之助の胸倉を掴む。

「それに、何だか旦さんの周りに、女のニオイがしてたしねっ」

「・・・・・・鋭いなぁ」

 里のことまで知れたら、どうなることやら。
 苦笑いをしつつ、千之助は抱いた狐姫の肩をぽんぽんと叩いた。

「お? けど、小菊はどうしたよ。放ってきて、大丈夫なのか?」

 狐姫がここにいるということは、妖幻堂には杉成辺りしかいないのではないか?
 杉成なら命じたことはちゃんとやるし、お仲間を起こすことも許可している。
 それなりに戦力にはなろうが、見た目小僧でしかない杉成一人では、小菊も不安だろう。

「大丈夫だよ。牙呪丸がいるもの」

「・・・・・・あいつ、ちゃんと小菊を守るか?」

 呶々女以外に興味のない牙呪丸が、狐姫の指示に従うとも思えない。
 疑いの目を向ける千之助に、狐姫はにやりと笑った。

「大丈夫。牙呪丸には、しっかり小菊を守ってもらわないと、呶々女の身に危険が及ぶかもしれないって言ってきた。『あたしのためにも、しっかり小菊を守っておいて』って書いてあるって言ってきたんだ」

「なるほどな。それは効果覿面だろう」
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