始末屋 妖幻堂
「あとね、九郎様も気をつけてくれるって」

「ほぅ。そいつぁ・・・・・・」

 花街に精通している人外の九郎助が目を付ければ、伯狸楼の動きも筒抜けだ。
 何か動くにしても、事前に察知できるだろう。

「全く九郎助にゃ、頭が上がらねぇな」

 里の件でも世話になった。
 しみじみと言いながら、千之助は読みにくい文に再び目を落とした。

「ほぅ。裏の遊女を味方に付けたか」

 結構な時間をかけて、文を読み終えた千之助が、感心したように声を上げた。

「やるじゃないか。やっぱり相棒が屁の役にも立たない奴だと、しっかりするんだね」

 狐姫も呶々女を褒める。
 と同時に、牙呪丸を落とすのも忘れない。
 千之助は苦笑いを浮かべた。

「じゃ、裏のことも筒抜けになるね。そろそろ総仕上げと行くかい?」

「いや、まだ早いな。もうちっと裏事情に詳しくならねぇと。呶々女は俺っちに登楼して欲しいようだが・・・・・・」

「何だってっ!」

 うきうきといった様子だった狐姫の眦が吊り上がる。
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