始末屋 妖幻堂
「生意気な! このわしにそのような口を利いたこと、後悔させてやる!」

「生憎、俺っちにゃそんなちんけな術は効かねぇよ」

 思いきり馬鹿にしたように、千之助は小男に向かって鼻を鳴らした。

「効かぬかどうか、試してくれるわ!」

 小男が千之助に向かって突進してくる。
 捕まえられていなくても、相手が大人しくしていれば、術をかけることはできるらしい。

 とりあえず、大男の動きにだけ注意し、千之助はその場に留まった。

「食らえっ!」

 小男が、拳を突き出す。
 狙いは額のようだ。
 千之助は眼前ぎりぎりまで拳を引き付けてから、ひょいと横に避けた。

「ふ~ん? そんなもんで急所を突いちゃ、下手すりゃ死ぬぜ?」

 勢い余って千之助の後ろでたたらを踏む小男に言う。
 小男の手には、鉄甲が嵌っていたのだ。
 あれを額に叩き込む気だったのだろう。

「一発で昏倒させにゃならん。悠長に洗脳してる暇はないんでな」

 拳を握りしめたまま振り返り、小男は身構えつつ言う。
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