始末屋 妖幻堂
第二十一章
『旦さん、大丈夫かい?』
佐吉を引き摺って山に分け入った千之助の足元で、狐姫が心配そうに声をかける。
千之助は黙ったまましばらく歩き、やがて倒れた木の前で立ち止まった。
「・・・・・・竹がねぇな」
呟き、行く手を阻む木に腰掛けた。
そして、帯を緩め、着物をはだける。
下腹部の傷が、少し熱を持って盛り上がっている。
『ああもぅ。無茶しないでおくれ。今度この傷が開いたら、助からないよ』
「そんときゃ、狐姫、介錯頼むぜ」
『やだよ! 不吉なこと言わないどくれっ!』
本気で怒り、狐姫はぷい、とそっぽを向いた。
一つ息をつき、千之助は傷に手を当て、状態を確かめる。
とりあえず、警告で済んだようだ。
「やれやれ・・・・・・」
熱は持っているが、傷が開いたわけではないので、手当てのしようもない。
着物を直し、千之助は、ざっと辺りを見渡した。
「竹が一番簡単なんだが・・・・・・。まぁいいか」
ひょいとその辺に落ちていた大きめの枝を取り、小刀で削り出す。
狐姫が、やっと千之助の傍に戻ってきた。
気遣わしげに、千之助の膝に乗ると、下腹部の傷を庇うように、ふわふわの身体を押しつける。
佐吉を引き摺って山に分け入った千之助の足元で、狐姫が心配そうに声をかける。
千之助は黙ったまましばらく歩き、やがて倒れた木の前で立ち止まった。
「・・・・・・竹がねぇな」
呟き、行く手を阻む木に腰掛けた。
そして、帯を緩め、着物をはだける。
下腹部の傷が、少し熱を持って盛り上がっている。
『ああもぅ。無茶しないでおくれ。今度この傷が開いたら、助からないよ』
「そんときゃ、狐姫、介錯頼むぜ」
『やだよ! 不吉なこと言わないどくれっ!』
本気で怒り、狐姫はぷい、とそっぽを向いた。
一つ息をつき、千之助は傷に手を当て、状態を確かめる。
とりあえず、警告で済んだようだ。
「やれやれ・・・・・・」
熱は持っているが、傷が開いたわけではないので、手当てのしようもない。
着物を直し、千之助は、ざっと辺りを見渡した。
「竹が一番簡単なんだが・・・・・・。まぁいいか」
ひょいとその辺に落ちていた大きめの枝を取り、小刀で削り出す。
狐姫が、やっと千之助の傍に戻ってきた。
気遣わしげに、千之助の膝に乗ると、下腹部の傷を庇うように、ふわふわの身体を押しつける。