始末屋 妖幻堂
「しかし、お前さんも九郎助もいたんだろ? 一体敵さんは、どんな団体さんで来たんだい?」

 受け取った水を少し足しながら、さらに薬草を練る千之助は、訝しそうに牙呪丸を見た。
 ただの人間相手に、遅れを取る様な彼らではないはずだ。

「・・・・・・おさん狐が来たのだ」

「なるほど。奴も妖狐の端くれ。破落戸十人よりも、侮れねぇか」

 敵対する同じ種ほど火花を散らす。
 九郎助は、おさん狐にかかり切りだったのだ。

 強い妖力の妖狐がやり合えば、それはそれは凄まじい戦いになろう。
 妖力に中(あ)てられて、単なる『おもちゃ』な杉成などは、上手く動けないかもしれない。

「妖狐の力は、相当なモンだからなぁ。お前さんも、やりにくかったんじゃねぇか」

 牙呪丸は妖ではあるが、妖力というものはない。
 ただのヒトや杉成よりは耐性があろうが、放たれた妖力による影響は、全くないとは言えないだろう。

「妖力というよりは、九郎助の旦那が放つ狐火や逃げ回るおさん狐の凄まじさで、思うように動けなかったというか。この狭い家の中を、お構いなしに走り回るものだから、下手に動いたら巻き添えになってしまう」

 九郎助とおさんを避けて、破落戸どもを片付けているうちに、小菊を攫われてしまった、と牙呪丸は言った。
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