始末屋 妖幻堂
第二十二章
件(くだん)の廓は、上から見たときと変わらず、戸がぴったり閉まっている。
「どうしたもんかな」
考えつつ、千之助は見世の前に立った。
幇間の姿も、その辺りにはない。
「ご免よ」
戸に手をかけ、力を入れる。
が、戸はびくともしない。
千之助は気にせず、拳で戸をがんがんと叩いた。
「ちょいとご免よ。今日はお休みかえ」
『だ、旦さん。大胆だねぇ』
肩の上の狐姫が、ちょっと呆れたように言う。
どうせもう最終段階だ。
こそこそする必要もない。
やがて内側から、閂を外す音がした。
「おぅ、お珍かしいじゃねぇか。この稼ぎ時に見世を閉めるたぁ、何かあったんかい」
細く開いた戸から顔を覗かせたのは、よぼよぼの爺だ。
千之助もたまに見たことのある、廓の男衆の一人だ。
あくまで表の遊女の世話をしている。
「小間物屋か。行商かね」
千之助の姿を認め、若干ほっとしたように、爺はもう少し戸を開いて言った。
「どうしたもんかな」
考えつつ、千之助は見世の前に立った。
幇間の姿も、その辺りにはない。
「ご免よ」
戸に手をかけ、力を入れる。
が、戸はびくともしない。
千之助は気にせず、拳で戸をがんがんと叩いた。
「ちょいとご免よ。今日はお休みかえ」
『だ、旦さん。大胆だねぇ』
肩の上の狐姫が、ちょっと呆れたように言う。
どうせもう最終段階だ。
こそこそする必要もない。
やがて内側から、閂を外す音がした。
「おぅ、お珍かしいじゃねぇか。この稼ぎ時に見世を閉めるたぁ、何かあったんかい」
細く開いた戸から顔を覗かせたのは、よぼよぼの爺だ。
千之助もたまに見たことのある、廓の男衆の一人だ。
あくまで表の遊女の世話をしている。
「小間物屋か。行商かね」
千之助の姿を認め、若干ほっとしたように、爺はもう少し戸を開いて言った。