始末屋 妖幻堂
第二十四章
「残るはあんた、一人だけだ」
千之助に言われ、楼主は息を呑む。
冷や汗が滝のように流れ、身体もぶれるほど震えているが、腰を抜かしているわけでもない。
いや、身体が固まって、へたり込むこともできないのだ。
「何じゃ、あの老人は」
「この見世の主さ。諸悪の根源だな」
千之助と牙呪丸に向き直られ、楼主は逃げようと、一歩後ずさった。
が、如何せん蛇男や喋る狐、あり得ない凄惨な現場を見たところだ。
恐怖で身体は固まってしまっている。
足がもつれ、そのまま尻餅をついた。
「あああぁぁぁ・・・・・・」
開けた口から情けない声を漏らし、楼主はずるずると地を這う。
「諸悪の根源だと? お前のせいで、我はこのような目に遭ったわけか」
牙呪丸が、ずいっと楼主に近づく。
牙呪丸の言う『このような目』というのは、あくまで着物を裂かれたことだ。
それははっきり言うと、楼主のせいではないのだが。
だが牙呪丸にとっては、己が襲われたことよりも、その後呶々女に叱られることのほうが重大事だ。
怒りに燃える目で、楼主に手を伸ばす。
がくがくと震える楼主の首に、牙呪丸の手が届きそうになった、そのとき。
いきなりドォン、という音が響き、ぶわ、と辺りが炎に包まれた。
千之助に言われ、楼主は息を呑む。
冷や汗が滝のように流れ、身体もぶれるほど震えているが、腰を抜かしているわけでもない。
いや、身体が固まって、へたり込むこともできないのだ。
「何じゃ、あの老人は」
「この見世の主さ。諸悪の根源だな」
千之助と牙呪丸に向き直られ、楼主は逃げようと、一歩後ずさった。
が、如何せん蛇男や喋る狐、あり得ない凄惨な現場を見たところだ。
恐怖で身体は固まってしまっている。
足がもつれ、そのまま尻餅をついた。
「あああぁぁぁ・・・・・・」
開けた口から情けない声を漏らし、楼主はずるずると地を這う。
「諸悪の根源だと? お前のせいで、我はこのような目に遭ったわけか」
牙呪丸が、ずいっと楼主に近づく。
牙呪丸の言う『このような目』というのは、あくまで着物を裂かれたことだ。
それははっきり言うと、楼主のせいではないのだが。
だが牙呪丸にとっては、己が襲われたことよりも、その後呶々女に叱られることのほうが重大事だ。
怒りに燃える目で、楼主に手を伸ばす。
がくがくと震える楼主の首に、牙呪丸の手が届きそうになった、そのとき。
いきなりドォン、という音が響き、ぶわ、と辺りが炎に包まれた。