始末屋 妖幻堂
「安心しな。伯狸楼は、ぶっ潰した。男衆も始末したし、楼主だって無事じゃ済むめぇ。もうこんな外道な見世、なくなるぜ」
千之助が、部屋に入りながら言った。
突然現れた男に、皆が初めて驚きの表情を浮かべる。
「潰した・・・・・・? え、でも・・・・・・」
困惑気味に、おさんを見る。
廓での遊女の管理は、基本的に遣り手の仕事だ。
それを一手に引き受けていたおさんがそこにいるのに、見世がなくなるというのは、どういうことか。
遊女らの視線に、おさんは、ふんと鼻を鳴らした。
「私は裏見世なんか、どうだっていいんだ。それどころか、別にあんたらだって、どうだっていい。この見世に義理だってないしね」
だからこの後、遊女らが廓から逃げようと、どうでもいいのだと、おさんは笑う。
「さぁ、逃げるなら今のうちだよ」
それだけ言うと、おさんはくるりと踵を返し、さっさと他の者を呼びに行く。
千之助はおさんの背中をしばし見つめ、我に返ると、横になっている遊女に駆け寄った。
「大丈夫かい? 立てるか?」
布団をめくり、遊女を抱き起こす。
他の遊女らも、やっと腰を上げ始めた。
「あれあれ。誰かと思えば、小間物屋さんじゃないかえ」
抱き起こした遊女を抱えている千之助を手伝いに近寄った一人の遊女が、初めて気づいたように、千之助を覗き込んだ。
「どうしたんだい。何で小間物屋さんが・・・・・・」
「何、行商に立ち寄ったら、この騒ぎだ。騒ぎに乗じて裏見世をぶっ潰してやったのさ」
千之助が、部屋に入りながら言った。
突然現れた男に、皆が初めて驚きの表情を浮かべる。
「潰した・・・・・・? え、でも・・・・・・」
困惑気味に、おさんを見る。
廓での遊女の管理は、基本的に遣り手の仕事だ。
それを一手に引き受けていたおさんがそこにいるのに、見世がなくなるというのは、どういうことか。
遊女らの視線に、おさんは、ふんと鼻を鳴らした。
「私は裏見世なんか、どうだっていいんだ。それどころか、別にあんたらだって、どうだっていい。この見世に義理だってないしね」
だからこの後、遊女らが廓から逃げようと、どうでもいいのだと、おさんは笑う。
「さぁ、逃げるなら今のうちだよ」
それだけ言うと、おさんはくるりと踵を返し、さっさと他の者を呼びに行く。
千之助はおさんの背中をしばし見つめ、我に返ると、横になっている遊女に駆け寄った。
「大丈夫かい? 立てるか?」
布団をめくり、遊女を抱き起こす。
他の遊女らも、やっと腰を上げ始めた。
「あれあれ。誰かと思えば、小間物屋さんじゃないかえ」
抱き起こした遊女を抱えている千之助を手伝いに近寄った一人の遊女が、初めて気づいたように、千之助を覗き込んだ。
「どうしたんだい。何で小間物屋さんが・・・・・・」
「何、行商に立ち寄ったら、この騒ぎだ。騒ぎに乗じて裏見世をぶっ潰してやったのさ」