始末屋 妖幻堂
第二十六章
「お前さんら、生国(くに)のことぁ覚えてるかい?」
ある夜、千之助は一階で、遊女らと車座になっていた。
車座の中心には、香炉が置かれている。
「ん~・・・・・・。ええっと・・・・・・」
「山ん中だよ。山間の・・・・・・あれ? 町で生まれたんだっけ?」
う~んう~んと首を捻る遊女らは、今初めて己の記憶に違和感を覚えたようだ。
落ち着いて考えてみると、昔の記憶がごちゃごちゃになっていることがわかる。
う~ん、と考える遊女らの顔に、不安の色がよぎる。
「ま、そう心配すんな。落ち着いて、順序立てて考えてみようぜ」
遊女らを落ち着かせるように、千之助は軽く言い、煙管を吹かせた。
裏見世の遊女は五人。
桔梗と芙蓉、桃香に小菫、小萩。
呶々女も千之助の後ろに控えている。
「まず、あんたらは何で伯狸楼に入った? 女衒に売られてのことか?」
「えっと・・・・・・。う、うん、そうだよ。伯狸楼には、誰かに連れて来られた。う~ん、男・・・・・・だったし、そんなじぃさんじゃなかったし。口入れ屋? かなぁ。いや、女衒だろ」
小菫が、腕組みしつつ言う。
口入れ屋に比べて、女衒は山奥の村にまで出向いて行ったりするので、比較的若い者が多いのだ。
ある夜、千之助は一階で、遊女らと車座になっていた。
車座の中心には、香炉が置かれている。
「ん~・・・・・・。ええっと・・・・・・」
「山ん中だよ。山間の・・・・・・あれ? 町で生まれたんだっけ?」
う~んう~んと首を捻る遊女らは、今初めて己の記憶に違和感を覚えたようだ。
落ち着いて考えてみると、昔の記憶がごちゃごちゃになっていることがわかる。
う~ん、と考える遊女らの顔に、不安の色がよぎる。
「ま、そう心配すんな。落ち着いて、順序立てて考えてみようぜ」
遊女らを落ち着かせるように、千之助は軽く言い、煙管を吹かせた。
裏見世の遊女は五人。
桔梗と芙蓉、桃香に小菫、小萩。
呶々女も千之助の後ろに控えている。
「まず、あんたらは何で伯狸楼に入った? 女衒に売られてのことか?」
「えっと・・・・・・。う、うん、そうだよ。伯狸楼には、誰かに連れて来られた。う~ん、男・・・・・・だったし、そんなじぃさんじゃなかったし。口入れ屋? かなぁ。いや、女衒だろ」
小菫が、腕組みしつつ言う。
口入れ屋に比べて、女衒は山奥の村にまで出向いて行ったりするので、比較的若い者が多いのだ。