始末屋 妖幻堂
「だからな、お前さんが怖がることは、もうねぇんだぜ」

 小菊の前にしゃがみ込んで言う千之助を、恐る恐る、といった風に、小菊は見た。
 じっと千之助を見、彼の腕に巻かれた布や、その周辺の傷跡に視線をやる。

「・・・・・・火傷・・・・・・?」

「そう。焼き払った」

「ね、姐さんたちは・・・・・・」

「初めにも言った通り、裏のヤクザモンたちは始末したが、その他の関係ねぇ奴らは、逃がしてやったぜ。皆、もうあんな廓に縛られないで、どこぞへ逃げ去ったさ。証文も焼けただろうしな」

「・・・・・・」

 相変わらず、小菊はじっと千之助を見る。

「だからな、もう怖がらなくていい。お前さんを汚した野郎どもは、皆まとめてお陀仏さ。ざまぁ見やがれってんだ」

 言った途端、僅かに千之助が顔をしかめた。
 手を下腹部に当てる。

「旦さん」

 狐姫が駆け寄ってくる。

「大丈夫だ。・・・・・・ったく、やり辛ぇ・・・・・・」

「もう・・・・・・お願いだから、無茶しないでおくれよ」

「何もしてねぇよ」
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