始末屋 妖幻堂
「え・・・・・・」

 目を見開いた小菊だったが、己の胸を包んだ千之助の手に、小さく身体を痙攣させて仰け反った。

「幸い命は助かったがな、まだ動けねぇ。ずっとお前さんの横に寝てたんだぜ? ま、どっちも意識はなかったからな。気づかねぇでも無理はねぇ」

「だ、旦那様・・・・・・。何故今、そんなことを・・・・・・」

 千之助の下で身体を痙攣させながら、小菊が問う。
 少しだけ、千之助は眼を細めた。

「何となく、俺っちに抱かれたすぐ後に、好いた男に会うってのはどうかな、と思ったのさ。朝になったら佐吉のことも言おうと思ってたがな、知らねぇまま別の男に抱かれるのは、気分良くねぇかも」

 止めるかい? というように、少し身体を起こした千之助に、小菊は自ら抱きついた。

「今ここに佐吉さんがいても、このままでは同じことです。佐吉さんが近くにいるなら、それこそこのままでは辛すぎます。このままで、佐吉さんの前に出る勇気はありません」

「そうかい。わかった。じゃ、もう何も言わねぇよ」

 再び小菊を押し倒し、千之助は彼女の足の間に、己の身体を割り込ませた。
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