始末屋 妖幻堂
 ちりっちりっと行灯の火が小さく爆ぜる。
 ゆらゆらと壁に映る影は、その場に座る女子(おなご)のもの。
 そのわりに、影の顔は細長く前に出ており、尻の辺りには大きな尻尾が揺れているのだが。

「姐さ~ん・・・・・・。落ち着いておくんなさいよぅ」

 ちょっと離れたところから、おっかなびっくり呶々女が声をかける。
 そんな呶々女をきろりと見、狐姫は面白くもなさそうに口を開いた。

「落ち着いてるじゃないか。これ以上、どう落ち着けってんだい」

「姐さん自体が落ち着いてても、炎が心に反応しちゃってんですよ」

 火事になるぅ~、と冷や冷やしている呶々女の後ろでは、とぐろを巻いた牙呪丸が、特大の饅頭を頬張っている。
 夜中にも関わらず、ここは昼間と変わらない。

「いきなり転がり込んできたと思ったら、不機嫌に座り込んで。呶々女に当たるでないわ」

 口の周りについたあんこを、ぺろ、と舐め、牙呪丸が顔を上げる。
 途端に、キッと狐姫が振り向いた。
 呶々女が慌てて新たな饅頭を牙呪丸の口に押し込んだ。

「・・・・・・まぁ・・・・・・姐さんの気持ちも、わかるけど。いくら仕事とはいえ、千さんが他の女を抱いてるなんてね」

 呶々女の言葉に、狐姫の唇が、きゅっと引き結ばれる。
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