始末屋 妖幻堂
第二十九章
目を覚ました小菊は、そろ、と身を起こした。
夕べのことは夢だったのかと思う。
寝間着は特に乱れていない。
だが、身を起こしたのは、千之助の部屋である。
きょろ、と周りを見、とりあえず、自分の部屋に戻って着物を着た。
不思議な感覚だ。
夕べのことは、何だか靄がかかったように、ぼんやりとしている。
寝ぼけて千之助の部屋で寝ていただけ、と言われれば、それだけのことと納得できる。
が---。
小菊は帯を締めながら、ちらりと己の下腹部に視線を落とした。
身体が、とてもすっきりしている。
身体の奥底に、澱のように溜まっていた気持ちの悪さも、すっかりなくなっているのだ。
こんなに晴れやかな気持ちは、一体いつ振りだろう。
階段を下りると、下の座敷に狐姫の姿があった。
狐姫は小菊を見、そっと唇に指を立てる。
見ると、狐姫の膝に頭を乗せて、千之助が眠っていた。
小菊は千之助を起こさないよう、足を忍ばせて奥の小さな炊事場に向かった。
顔を洗って、朝餉の用意をしようと、あるものを確かめる。
そこで、ふと小菊は顔を上げた。
「ね、姐さん。もしかして、旦那様は夕べずっと、ここで・・・・・・?」
もしや狐姫という恋人のいる千之助が、朝まで小菊と寝ているわけにもいかず、あの後早々に二階の布団を小菊に譲ったのかと思い、小菊は申し訳なさそうに言った。
が、狐姫は、ふふ、と笑っただけで、膝の上の千之助の頭を撫でている。
夕べのことは夢だったのかと思う。
寝間着は特に乱れていない。
だが、身を起こしたのは、千之助の部屋である。
きょろ、と周りを見、とりあえず、自分の部屋に戻って着物を着た。
不思議な感覚だ。
夕べのことは、何だか靄がかかったように、ぼんやりとしている。
寝ぼけて千之助の部屋で寝ていただけ、と言われれば、それだけのことと納得できる。
が---。
小菊は帯を締めながら、ちらりと己の下腹部に視線を落とした。
身体が、とてもすっきりしている。
身体の奥底に、澱のように溜まっていた気持ちの悪さも、すっかりなくなっているのだ。
こんなに晴れやかな気持ちは、一体いつ振りだろう。
階段を下りると、下の座敷に狐姫の姿があった。
狐姫は小菊を見、そっと唇に指を立てる。
見ると、狐姫の膝に頭を乗せて、千之助が眠っていた。
小菊は千之助を起こさないよう、足を忍ばせて奥の小さな炊事場に向かった。
顔を洗って、朝餉の用意をしようと、あるものを確かめる。
そこで、ふと小菊は顔を上げた。
「ね、姐さん。もしかして、旦那様は夕べずっと、ここで・・・・・・?」
もしや狐姫という恋人のいる千之助が、朝まで小菊と寝ているわけにもいかず、あの後早々に二階の布団を小菊に譲ったのかと思い、小菊は申し訳なさそうに言った。
が、狐姫は、ふふ、と笑っただけで、膝の上の千之助の頭を撫でている。