始末屋 妖幻堂
「そうさなぁ。牙呪丸が暴走しないうちに、何とかしねぇと。おぅ、そういやぁ小太ぁどうしたぃ? 店に来たか?」

「あ、いえ。あたしを連れてきてくれてから、お見かけしてません」

 我に返り、小菊は答えた。
 たった二日ほどのことだが、随分会ってないような気がする。
 少し気になり、小菊は心配そうな顔になった。

「こっちにゃ来てねぇか。店にもいなかったな。けど、店の者も女将も、別に慌てた風はなかった。たまたまいなかっただけだとは思うが・・・・・・」

 う~む、と考えていると、二階から軽い物音がした。
 千之助が顔を上げる。

「おぅ、とらのお帰りだ。何か掴んできたかな? 杉成、連れてきてくんな」

 杉成が、音無く立ち上がって、二階に走った。
 程なく腕に、とらを抱えて戻ってくる。
 とらは千之助を認めると、杉成の胸を蹴って、派手に飛びついた。

「よしよし。呶々女には会えたかい?」

 並の猫より大きなとらが飛びかかったのにも関わらず、千之助はとらを軽く受け止める。
 しかも、片手で。
 重さなど、微塵も感じていないようだ。

 驚いた小菊だが、返ってそれが、とらが張り子だということの証拠にも思える。
 それが証明されたところで、では何故張り子人形が動くのか、という疑問は晴れないのだが。

 化け物小屋。
 小菊は改めて、ここに集う面々を見た。
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