始末屋 妖幻堂
第六章
ここで時間は少し戻る。
同日、日が高くなったばかりの頃---。
「ねぇねぇ、あの人、どこの旦那だい?」
「この時分から市を歩いてるってことは、所帯持ちじゃないのかい?」
ひそひそと、いろいろな店の女将や道行く女子が言葉を交わす。
その視線は全て、ある大店の前に佇む一人の男に注がれている。
「水菓子を選んでるみたい。もしかしたら、独り者かもよ?」
「あんな良い男、ここいらの人間じゃないよねぇ。一目見たら、忘れないよ」
男の一挙一動に、その辺の女子が熱い視線を送る。
そんな中、当の本人は、まとわりつく視線を気にする風でもなく、手に持った瓜を、じっと睨んでいた。
---この中で一番甘そうではあるが、菓子に比べたら微々たるものだ。こんな店、我には用などないのだが---
ぶつぶつと、心の中で文句を垂れる。
店には青菜や水菓子の類が所狭しと並んでいるが、男の気を引くような甘味はない。
同日、日が高くなったばかりの頃---。
「ねぇねぇ、あの人、どこの旦那だい?」
「この時分から市を歩いてるってことは、所帯持ちじゃないのかい?」
ひそひそと、いろいろな店の女将や道行く女子が言葉を交わす。
その視線は全て、ある大店の前に佇む一人の男に注がれている。
「水菓子を選んでるみたい。もしかしたら、独り者かもよ?」
「あんな良い男、ここいらの人間じゃないよねぇ。一目見たら、忘れないよ」
男の一挙一動に、その辺の女子が熱い視線を送る。
そんな中、当の本人は、まとわりつく視線を気にする風でもなく、手に持った瓜を、じっと睨んでいた。
---この中で一番甘そうではあるが、菓子に比べたら微々たるものだ。こんな店、我には用などないのだが---
ぶつぶつと、心の中で文句を垂れる。
店には青菜や水菓子の類が所狭しと並んでいるが、男の気を引くような甘味はない。