始末屋 妖幻堂
「・・・・・・ったくあんたは。小僧をとっとと見つけないと、呶々女だって帰って来られないんだからねっ」

 心底呆れた、というように、ひらひらと手を振る狐姫に、牙呪丸が反応した。
 今までのぼんやりした態度とは打って変わり、いきなりがばっと立ち上がる。

「それを早く言わぬか。小僧を見つけ出せば、呶々女は帰って来るのだな?」

 言うなり、身を翻そうとする。
 狐姫が、慌てて牙呪丸の袖を掴んだ。

「ちょ、ちょいと待ちなって。どこ行くんだよ?」

「決まっている。伯狸楼だ」

「あ、あんたがいきなり乗り込んで、どうなるってんだよ」

「小僧を攫ったのは、あそこの亡八だ。それは確かめた。なら伯狸楼を当たるのが妥当だろう」

「そんなこたぁ、わざわざ調べるまでもなく、大方の予測はついてることだよ! 確かにあんたのお陰で裏が取れたわけだけど、はっきりしたからって、いきなり乗り込めるところじゃないんだ!」

 袖を掴む狐姫を引き摺る勢いで出て行こうとする牙呪丸に、小菊はだたおろおろするばかりだ。
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