始末屋 妖幻堂
「ああ全く、うるさい男よな。・・・・・・どれどれ?」

 心底鬱陶しそうに顔をしかめ、狐姫はやっと開いた紙に目を走らせた。
 じっと紙を睨む狐姫の眉間に、深く皺が刻まれる。

「・・・・・・ん~~? ・・・・・・まだ裏にまでは足を踏み入れられないってことか? う~ん・・・・・・」

 難解な文章を読むように、ぶつぶつ言いながら狐姫はゆっくりと読んでいく。
 牙呪丸が、痺れを切らせたように、また口を開いた。

「何を呑気に読んでいるのじゃ。それぐらいの文章、さらっと読めるじゃろっ」

「やかましいっ! 呶々女の字は読みにくいんだよっ! たったこれっぽっちのこと書くだけに、こんだけ難解な文字を書けるほうが、どうかしてんだよ!」

 狐姫が牙を剥く。

「旦さんも、いっつもぼやいてるだろ! ったく、どいつもこいつも使えねぇ」

「使えないなら呶々女を使うな。旦那は読みにくいとは言うが、お主ほど時間はかからず読めるぞ。読めないのは、お主の技量が足りないからだ」

「何だって! このクソ汚い字を読む技量って、どんな技量だよ!」

 狐姫は最早手紙を読むどころではなくいきり立っている。
 小菊はそろそろと狐姫に近づき、ちらりと手元の紙を覗いてみた。
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