執着王子と聖なる姫
「よし!これでオッケーやな」
「ですね」
「後は生地仕入れて…」
「経費で仕入れんなよ?」
「わーかってるって」
後方からの声に反射的に振り返ると、カメラを片手にハルさんが難しい顔をしていた。モデルの姿はもう既に無い。
「また服増やすんか。もうええ加減にせぇよ。俺の服入れるスペースも考えろって。服の為に増築とか勘弁やぞ」
「残念でしたー。今回はセナのしか作りませーん」
「は?そりゃ珍しいこともあるもんや。嫁に嫉妬でもされたんか?」
「ちゃうわ!今回は愛斗がデザインすんねん」
「はぃ?」
並べられたデザイン画を手に取り、まじまじと見つめるハルさん。どれもそれなりに自信はあるけれど、趣味が違うだけに喜んでもらえるとは思い難い。
窺い見るようにチラリと視線を向けると、ハルさんはやはりどこか納得がいかないというような表情を浮かべていた。
「ごっつ凝ってるやろ?」
「これ、全部愛斗が描いたんか?」
「あぁ、はい」
プロの描いた物を手直しするのはさすがに気が引けたので、全て一から描かせてもらった。比べればまだまだ拙いかもしれないけれど、これが今の俺の精一杯だ。
「この色を持ってきた理由は?」
「俺、セナには深い色が似合うと思うんです。髪も瞳も黒いから、きっと綺麗だと思います」
全体的に、深みのある色を合わせた。勿論、地味にならないように差し色を入れたり、デザイン自体を凝ったものにしたりはしたのだけれど、今までのセナのイメージをガラリと変えてしまうことは否めない。
「愛斗の趣味か?」
「まぁ…そうですね」
「うーん…」
「色、変えましょうか?」
「別にええがな。何でそない難しそうな顔してんねん」
見かねたケイさんが割ってくれたものの、ハルさんの表情はどうも晴れない。何かマズイことでもあるのだろうか?と、不安にもなるというものだ。
「あんな、愛斗…」
ため息混じりの囁くような声に、そっと耳を傾ける。同じように身を寄せたケイさんが、珍しく眉根を寄せていた。
「ですね」
「後は生地仕入れて…」
「経費で仕入れんなよ?」
「わーかってるって」
後方からの声に反射的に振り返ると、カメラを片手にハルさんが難しい顔をしていた。モデルの姿はもう既に無い。
「また服増やすんか。もうええ加減にせぇよ。俺の服入れるスペースも考えろって。服の為に増築とか勘弁やぞ」
「残念でしたー。今回はセナのしか作りませーん」
「は?そりゃ珍しいこともあるもんや。嫁に嫉妬でもされたんか?」
「ちゃうわ!今回は愛斗がデザインすんねん」
「はぃ?」
並べられたデザイン画を手に取り、まじまじと見つめるハルさん。どれもそれなりに自信はあるけれど、趣味が違うだけに喜んでもらえるとは思い難い。
窺い見るようにチラリと視線を向けると、ハルさんはやはりどこか納得がいかないというような表情を浮かべていた。
「ごっつ凝ってるやろ?」
「これ、全部愛斗が描いたんか?」
「あぁ、はい」
プロの描いた物を手直しするのはさすがに気が引けたので、全て一から描かせてもらった。比べればまだまだ拙いかもしれないけれど、これが今の俺の精一杯だ。
「この色を持ってきた理由は?」
「俺、セナには深い色が似合うと思うんです。髪も瞳も黒いから、きっと綺麗だと思います」
全体的に、深みのある色を合わせた。勿論、地味にならないように差し色を入れたり、デザイン自体を凝ったものにしたりはしたのだけれど、今までのセナのイメージをガラリと変えてしまうことは否めない。
「愛斗の趣味か?」
「まぁ…そうですね」
「うーん…」
「色、変えましょうか?」
「別にええがな。何でそない難しそうな顔してんねん」
見かねたケイさんが割ってくれたものの、ハルさんの表情はどうも晴れない。何かマズイことでもあるのだろうか?と、不安にもなるというものだ。
「あんな、愛斗…」
ため息混じりの囁くような声に、そっと耳を傾ける。同じように身を寄せたケイさんが、珍しく眉根を寄せていた。