執着王子と聖なる姫

 手に入れたモノは確かな未来

夕食を済ませると、すぐにシャワーを浴びて各自の部屋へと戻る。多少皆でTVを見ていたりする時もあるけれど、特別両親が話しかけてきたりしない場合はいつもそうだった。

「あれ?お前何してんの?珍しい」
「マナを待ってました」

Tシャツにショートパンツという珍しくラフな格好をしたセナが、ダイニングのベンチで足をプラプラさせながらオレンジジュースを飲んでいる。リビングのソファでは、片付けを済ませた両親が寄り添っていた。

「コンビニに行きませんか?」
「あぁ…いいけど。ちょっと待ってろ。財布持って来る」

コクリと頷くセナに軽く首を傾げ、二階へと続く階段を上る。俺が行くついでに着いて来ることはあっても、こうしてセナから誘うことは初めてだ。何か欲しい物でもあるのだろうか?と、その程度にしか考えていなかったことを後々後悔した。

「ちょっと行ってくる」
「行ってらっしゃーい」
「暗いから気を付けてね」
「おぉ」

どうも両親の様子がおかしい。そう思えど、セナはもうリビングを出てしまった後だ。慌てて追いかけて玄関を出たものの、どうも腑に落ちない。

「なぁ、何か欲しい物でもあんのか?」
「無いですよ」
「は?」
「少しマナと二人で話がしたかっただけです」

月明かりの下、そのまま闇に溶け込んでしまいそうなほどに真っ黒の髪。白い肌がそれを引き留めるも、今掴まなければ消えてしまう。そんな思いに駆られてバッと腕を引いた。

「どうしたんですか?」
「あぁ…いや、別に」

そのまま手を引き、取り敢えず飲み物を買うためにコンビニへと向かう。始終無言を通していたセナが口を開いたのは、会計を終えて外へ出た時だった。
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