執着王子と聖なる姫
こうして我が子にまで気を遣わせてしまうあたり、うちの母親は素晴らしい人物だと言える。まぁ、色んな意味で。

その母を愛して止まない父もそれ然り。

諦めるしかなかった俺が、早熟な子供であることは致し方ないと思う。こうして甘えて擦り寄って来る妹がいるのだから、突き放すわけにもいかない。


とにもかくにも、近所でも「Beautiful girl」と名高かった女を抱いて眠れるのだ。男としてはこれほどに嬉しいことはあるまい。それがたとえ、手のひらサイズの胸を持つ実の妹だったとしても、だ。


「お前の胸はいつ成長期を迎えるんだろねー。お兄さんは心配だよ」


ふにっと掴むと、やはりそれは残念なくらいの手のひらサイズで。このまま成長が止まってしまったら、実に可哀相だ。

妹は、身長が足りないことを除けば母に瓜二つ。
何もこんなところまで似なくとも良いだろうに…と言う俺に、母のアレが好きらしい父は、「俺は可愛いと思うけどねー」などと笑っていた。要はあの人は、「マリー」ならば何でも良いのだ。顔もイイし仕事も出来るのに、非常に残念な人だと思う。

「俺はセナみたいな方がいいけどね」

妹の頭を腕に乗せたままゴロリと仰向けになると、風に揺れるネイビーブルーのカーテンが見えた。この色は、妹が好きな色だ。

「セナには白が似合う。あと…ピンクとか…そう、淡い色がいい」

あの日会って以来、俺の思考はセナで埋め尽くされていて。
家が近いだけあってあれ以来何度か我が家に遊びに来ているのだけれど、いつも「ちーちゃん」と呼ばれるお姉さんの陰に隠れてしまっている。


そのお姉さんが母親だと知っていたくショックを受けたのは、また別の話だ。

あれは詐欺だと思う。うちの母親も大概だけれど、あれはどう見ても二十代半ばだ。そして、そんな人を奥さんにしているハルさんは、どう考えてもロリコンだと思う。試しに父に言ってみたら「それは言っちゃダメだよ」と言われたので、あながち間違いでもないのだろう。

「今日も来るかな」

今日こそは話しかけてみよう。と、ちょっとした誓いを立ててみる。特別目を引くような子でもないのだけれど、観察していると面白い。今まで出会ったことのないような女だった。
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