執着王子と聖なる姫
メーシーが愛斗の異変に気付いたのは、夏休みが終わって暫くしてからだった。
べったり傍に居た聖奈が家に戻った途端、愛斗の情緒が不安定になった。今まで放置と言っても過言ではない程に気にしていなかった携帯を気にするようになり、何をしているのか部屋から出て来る回数が極端に減った。
妹である莉良の呼び掛けにさえ応えず、心配した莉良がこっそりと愛斗の部屋を覗くと、必ず枕を抱き締めて眠っているのだと言う。
その理由を尋ねても口を割らない本人に代わり、こっそりと聖奈が教えてくれたのだ。「マナはメーシーが思うより甘えん坊さんなんですよ」と。
今まで押し殺し続けていただけに、一度手に入れた愛情への愛斗の執着は相当なものだったらしい。それを申し訳なく思うと同時に、一身に受けることになってしまった聖奈を心配したのは、何もメーシーだけではない。
「ちょっと危ないんちゃうか、おたくの息子」
聖奈の腕に残る噛み跡を見付けた晴人にそう言われ、メーシーは「ごめん」と複雑な表情で頭を下げるしかなかった。
「まったく…誰に似たんだか」
未だベッドの中で寝息を立てているだろう妻の顔を思い浮かべ、メーシーは一人重いため息を吐いた。
べったり傍に居た聖奈が家に戻った途端、愛斗の情緒が不安定になった。今まで放置と言っても過言ではない程に気にしていなかった携帯を気にするようになり、何をしているのか部屋から出て来る回数が極端に減った。
妹である莉良の呼び掛けにさえ応えず、心配した莉良がこっそりと愛斗の部屋を覗くと、必ず枕を抱き締めて眠っているのだと言う。
その理由を尋ねても口を割らない本人に代わり、こっそりと聖奈が教えてくれたのだ。「マナはメーシーが思うより甘えん坊さんなんですよ」と。
今まで押し殺し続けていただけに、一度手に入れた愛情への愛斗の執着は相当なものだったらしい。それを申し訳なく思うと同時に、一身に受けることになってしまった聖奈を心配したのは、何もメーシーだけではない。
「ちょっと危ないんちゃうか、おたくの息子」
聖奈の腕に残る噛み跡を見付けた晴人にそう言われ、メーシーは「ごめん」と複雑な表情で頭を下げるしかなかった。
「まったく…誰に似たんだか」
未だベッドの中で寝息を立てているだろう妻の顔を思い浮かべ、メーシーは一人重いため息を吐いた。