執着王子と聖なる姫
愛斗がこれから通うJAG学院には、モデル科がある。

それでなくとも愛斗は色んな女に言い寄られ気を揉んでいるというのに、モデルになりたいと言うような、美人でスタイルも良い女達に言い寄られたらどうなるだろうか。聖奈の不安は尽きることがなかった。


「マナはセナだけのマナです。誰にも渡しませんよ」


シャワーをかけられながら愛斗にしがみ付き、そのまま首筋に吸い付いて紅い跡を残す。こうすることで所有した気分になるのは、男も女も同じなのではないかと思う。

「上がってメシ食うぞ。腹減った」
「今朝のご飯は何ですかね?」
「さぁな。でも、メーシーが作ってたから当たりだな」
「ですね」

佐野家の食卓は、当たりハズレの差が大きい。

最近はそこまでまずいものは出なくなったけれど、日本に戻ったばかりの頃はそれはそれは酷かった。見兼ねた愛斗が自らキッチンに立つくらいのもので、マリの料理のセンスはどうなっているのだろう…と頭を悩ませたこともある。

「マリーはホント何も出来ない女だからな。メーシーがいなきゃ生きてけないんじゃないか、アイツ」

「それがいいんだよ」

扉の外から掛けられた声に、タオルを首に掛けて聖奈の体を拭いていた愛斗は嘆息した。

「覗きか?いい趣味だな、メーシー」
「失礼だな。朝ご飯が出来たから呼びに来ただけだよ」

不満げに応えるメーシーに「すぐ行く」と返事をし、愛斗は鏡を見ながら首筋に薄らと付いた紅い跡をなぞった。

「また週末な」
「寂しいですか?」
「お前が、だろ」

ニヤリと笑うと、素直に「寂しいです」と返って来る。この支配感が、堪らなく好きだった。
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