執着王子と聖なる姫
自分は18に、聖奈は16になった。
聖奈はあと二年高校生活が残っているけれど、自分は高校を卒業して専門学校に入学した。JAGの付属の専門学校なだけに、ある一定の成績を収め続ければ何の問題も無くJAGに入社させてくれる。

その自信がある愛斗は、晴人にある提案をしようと家に出向くことにしたのだ。

「迎えに行くから学校で待ってろ」
「何時に終わるんですか?」
「んー。今日は軽い説明だけっつってたから、13時くらいだと思う」
「だったらセナの方が早いですよ」

何か言いたげな聖奈の肩を抱き寄せ、愛斗は身長差を利用してこめかみに唇を寄せた。

「お前が来る?」
「行ってもいいんですか?」
「別に構わねーよ」
「じゃあ行きます」

嬉しそうに笑う聖奈に、愛斗はふっと笑い声を漏らす。相当待ち時間があるだろうけれど、聖奈がそれを望むならそうすれば良い。そんな思いがあった。

「駅前にカフェがあるから、そこで待ってろ」
「前に貰ったのがまだ残ってますよ」
「使えばいいのに」
「これはマナのお金ですから」

差し出した千円札を押し返され、愛斗は渋々それを財布に戻した。

本当は一度出したお金を引っ込めることはしたくないのだけれど、この状態の聖奈には何を言っても無駄だということはよくわかっている。

「無くなったら言えよ?」
「わかってます」

聖奈も聖奈で、きっちりと引くべき箇所は弁えている。何だかんだと言って、上手くいっているのだ。この二人の間では。

「先にメシ食ってる?」
「お腹が空いたら食べてます」
「食べてる方に千円」
「もうっ!」

改めて聖奈の肩を抱き、愛斗は身を屈めて頬に唇を寄せる。

食いしん坊の聖奈が、大人しく待っていられるとは思えない。こう言えば、負けん気の強い聖奈は意地でも待っているのだ。それがわかっている愛斗は、こうして聖奈を上手く操る。

「食べずに待っていられたら、はるとの話の時に隣に居てもいいですか?」
「それはダメ」
「わかりました」

アッサリと引いた聖奈の肩を抱きながら、改めて「賢い女だ」と思う。頑固な部分はあるけれど、こうして引くところはきちんと引く。そんな聖奈の賢さが好きだった。
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