執着王子と聖なる姫
聖奈にしてみても、愛斗がOKを出すとは端から思ってはいない。言ってみただけというやつだ。

OKが出ればラッキー。その程度にしか考えていないので、別段ガッカリする様子も見せずに大人しく肩を抱かれていた。

「どこで降りますか?」
「ん?いつもの駅で降りる」
「それじゃ遠くなるんじゃ…」
「いいよ、別に」

愛斗の通うJAG学院は、一つ向こうの駅を降りた目の前にある。聖奈が降りる駅で降りてしまえば、10分程歩かなければならない。

愛斗にしてみれば大した距離ではないのだけれど、運動嫌いの聖奈からしてみれば10分も歩くなどとんでもない。

「向こうで降りればいいのに」
「いーんだよ」

ギュッと抱き寄せられ、愛斗の胸に顔を埋めたまま聖奈は電車に揺られる。

立ってさえいれば、あとは愛斗が支えてくれる。そんな信頼に身を任せるのが、聖奈は好きだった。
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