執着王子と聖なる姫
門の前まで聖奈を送り、校舎に入るのを見届けてから愛斗は踵を返した。

人の波に逆流するように歩く愛斗を見ながら、制服姿の女の子達が何やら嬉しそうにはしゃいでいる。どうやら卒業した今でも、愛斗は下級生の間では人気者らしい。

「マナ先輩!」

不愉快な噂話の声の中から聞き覚えのある声を拾い、愛斗はゆっくりと顔を上げる。

「おぉ」
「セナ送ってきたんですか?」
「まぁな」

目の前でにこにこと笑うのは、聖奈の友人、麻耶だ。言い寄って来ていた女の名を全て覚えている愛斗の超絶頭脳は、当然の如く麻耶の名もポンッと弾き出す。

「今年もよろしくな、マヤちゃん」
「まだ同じクラスかわかんないですよー」
「クラス離れてもよろしくってこと」
「あっ、そうゆうことですか!わかりました。へへー」

ポンポンと頭を撫でられてにへらっと笑う麻耶に、愛斗はキュッと表情を引き締めてうんうんと頷いた。

「じゃ、俺行くから」
「行ってらっしゃーい!お気を付けて」
「thank you」

手を振って歩き出し、目指すは一駅向こうのJAG学院だ。
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