執着王子と聖なる姫
制服姿の人波を逆流しながら暫く歩き、その姿が疎らになった頃に愛斗はピタリと歩みを止めた。
すると、少し後方から聞こえてきていたヒールの音もピタリと止まる。
どれくらい前からだろうか。一定の距離を保って聞こえてくるヒールの音に愛斗は気付いていた。
徐に振り返ると、バツが悪そうにペロッと舌を出した女が「へへへっ」と笑いながら歩み寄って来る。
「hi」
「誰?」
ブロンドヘアーに透き通るような白い肌をしたその女に、愛斗はわざと日本語で応える。
自他共に認めるフェミニストの息子だけに愛斗もフェミニストを自負しているのだけれど、明らかに不審な行動をしているその外国人にまでは、いくら愛斗でも寛大な行動はとれなかった。
「迷子デース」
微妙に片言の日本語に、「やっぱりか…」と愛斗は訝しげに目を細めた。
見た目は丸っきり外国人なのだけれど、どうも日本人の匂いがする。振り返ってその姿を見た瞬間、愛斗はそう感じていた。
「何で俺に着いてきた」
「high schoolに行く学生ばっかりで困ってたデスヨ」
「俺だって学校に向かう学生だぞ」
「stationまでの道教えてくだサーイ」
「どこの駅に行くんだよ」
「学校前デース」
学校前と聞き、女を上から下まで改めて見た愛斗は、ふぅっとため息をついて前方を指した。
「あっち」
「Thank you!」
「JAGの学生だろ?」
「Yes!」
「一緒に行くか?」
「Thank you!」
隣に並んだ女の髪が、柔らかな春の陽の光りを浴びてキラキラと輝いている。久しぶりに見た見事なブロンドヘアーに、愛斗は懐かしさを噛み締めた。
「佐野愛斗。マナでいいよ」
「I'm Rebecca」
「デザイン科」
「me too」
問うまでもなく、気付いていた。初めはモデル科だろうかとも思ったのだけれど、それにしてはレベッカのセンスは奇抜過ぎる。
モデルという職業を選ぶ女は、自分に似合う服装はしても、ショーでもない限りは奇抜なものは好まない。家内に二人モデルが居るだけに、愛斗はそれをよく知っていた。
そして、レベッカの嘘にも気付いていた。
すると、少し後方から聞こえてきていたヒールの音もピタリと止まる。
どれくらい前からだろうか。一定の距離を保って聞こえてくるヒールの音に愛斗は気付いていた。
徐に振り返ると、バツが悪そうにペロッと舌を出した女が「へへへっ」と笑いながら歩み寄って来る。
「hi」
「誰?」
ブロンドヘアーに透き通るような白い肌をしたその女に、愛斗はわざと日本語で応える。
自他共に認めるフェミニストの息子だけに愛斗もフェミニストを自負しているのだけれど、明らかに不審な行動をしているその外国人にまでは、いくら愛斗でも寛大な行動はとれなかった。
「迷子デース」
微妙に片言の日本語に、「やっぱりか…」と愛斗は訝しげに目を細めた。
見た目は丸っきり外国人なのだけれど、どうも日本人の匂いがする。振り返ってその姿を見た瞬間、愛斗はそう感じていた。
「何で俺に着いてきた」
「high schoolに行く学生ばっかりで困ってたデスヨ」
「俺だって学校に向かう学生だぞ」
「stationまでの道教えてくだサーイ」
「どこの駅に行くんだよ」
「学校前デース」
学校前と聞き、女を上から下まで改めて見た愛斗は、ふぅっとため息をついて前方を指した。
「あっち」
「Thank you!」
「JAGの学生だろ?」
「Yes!」
「一緒に行くか?」
「Thank you!」
隣に並んだ女の髪が、柔らかな春の陽の光りを浴びてキラキラと輝いている。久しぶりに見た見事なブロンドヘアーに、愛斗は懐かしさを噛み締めた。
「佐野愛斗。マナでいいよ」
「I'm Rebecca」
「デザイン科」
「me too」
問うまでもなく、気付いていた。初めはモデル科だろうかとも思ったのだけれど、それにしてはレベッカのセンスは奇抜過ぎる。
モデルという職業を選ぶ女は、自分に似合う服装はしても、ショーでもない限りは奇抜なものは好まない。家内に二人モデルが居るだけに、愛斗はそれをよく知っていた。
そして、レベッカの嘘にも気付いていた。