執着王子と聖なる姫
「クラスメイトだよ。何か懐かれてんの」
「ふぅん」
「セナがいることは伝えてるし、俺にそんな気がないこともちゃんと伝えてる」
それにしては…とツッコミかけ、メーシーは晴人の存在を思い出す。言ったが最後、間違いなく質問タイムに突入する。授業があるだけにそれは避けたいと思うメーシーは、にっこり笑って晴人の肩を強めに抱いた。
「大丈夫だよ、王子」
「wow!こっちはprince?」
空気を読んでか読まずか割って入って来たレベッカが、愛斗に紙コップを差し出す。それを受け取って一口喉に通し、愛斗は大きく頷いた。
「大丈夫です。俺には聖奈がいますから」
「ほんまやろな」
「誓います。ちょっとそのことで話があるんで、終わったら寄っていいですか?」
「おぉ。午後から撮影あるから待っとって。千彩には連絡しとく」
「ちーちゃん一人ですか?だったらお昼一緒に…」
「うちの嫁を外に連れ出すな」
「あ…はい」
短く返事をしてペこりと頭を下げた愛斗を興味深げに見つめながら、右に倣えでレベッカもペこりと頭を下げた。
「戻るぞ、ベッキー」
「sure」
並んで歩く二人の姿を見つめながら、メーシーは晴人に問う。
「どっちに賭ける?」
「食う方に一万」
「あちゃー。信用無いなぁ」
即答かよ。と、苦笑いをするメーシーに、晴人は呻き声に近い声で言った。
「食ったら即引き離す」
「どっちを?」
「謎の金髪」
「セナちゃんじゃないんだ」
「セナが言うこと聞くわけないやろ」
「だね」
聖奈が愛斗に対して盲目的なことは、勿論晴人も承知している。だからレベッカを引き離す。
実に単純明快な答えだった。
「じゃ、俺は食わない方に二万」
「おたくの息子やで?」
「麻理子の子、だからだよ。麻理子がそうだったように、マナもセナちゃん以外を恋人とは認めない」
「ほんでもおたくの嫁さん、俺と何回もヤってはったけど」
「それはそれ、これはこれ。今更蒸し返すなよ。それに、マナは俺の子でもあるからね」
ふふふっと意地悪く笑うメーシーに、晴人は大きくため息をついた。
先が思いやられる…と、今日持ちかけられるだろう話にだいたい予想がついている晴人は、鈍い頭痛を感じることとなった。