執着王子と聖なる姫
教室へ戻ると、やはり視線が集まって。もうわかりきっている事態なだけに愛斗はさほど気にはしなかったのだけれど、レベッカまでもがそうだとは思わなかった。

「お前…さ」
「ん?」

紙コップを片手に小さく首を傾げるレベッカは、やはり左目を隠したままにしている。

どちらかと言えば隠すべきは右目だろうと思うのだけれど、ふとレベッカの髪の色が目に入り、愛斗はツッコむのを止めた。

「綺麗な色だな、髪」
「マナの目もbeautifulデスヨ」

そうアッサリと言ってレベッカは素知らぬ顔で席に着いたけれど、言われた側の愛斗は脳内が大パニックだ。

今までそう言ったのは二人だけ。
実の父親であるメーシーと、恋人である聖奈。
ただ二人だけなのだ。

「やめろ。そうゆうこと言うの」
「事実デース」
「黙れ」

ボソボソと会話をする異色組の前後では、ボソボソと噂話が始まる。ここでもか…と嘆息する愛斗に、レベッカは紙コップを両手で握り締めてククッと笑う。

「日本語難しいデース」
「バーカ。零れんぞ、ジュース」
「おっと!」

本当は全部聞こえて、意味まで理解できているくせに。と、同じ境遇にうんざりしている愛斗はレベッカの頭をそっと撫でた。


「気にすんな。綺麗だよ、お前は」


< 142 / 227 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop