執着王子と聖なる姫
綺麗な瞳だと思う。

色もそうだけれど、妹は汚れを知らない。そんな妹が傷付く様をぼんやりと眺めながら喜ぶほど、俺はサディスティックな気質は持ち合わせていないつもりだ。

「ここだよ、レイ」
「んー…まなぁ」
「起きて準備しろよ。学校行くぞ」
「…ヤダ。学校行きたくない」
「そんなこと言うなって。メーシーが心配するだろ?」
「だったらメーシーに言って?レイはもう学校行かないって」
「そんなのダメに決まってる。マリーがぜってー許さない」
「メーシーもマナも、いっつもマリーのことばっかり。誰もレイのことなんて見てくれない!」

ふいっと背けられた体が、小さく震えている。こうゆうことをするから、こいつは放っておけない。つくづく損な役回りだと思う。両親が互いにべったりなばっかりに。可哀相な俺。


「I love you,Layla.送ってやるから一緒に学校行こう?」


普段どれだけ冷たくあしらおうとも、俺にとってレイは可愛い妹なのだ。泣いていれば慰めるし、震えていれば抱き締めてやる。母にはよく「マナはレイに甘い」と言われるけれど、致し方ないと思う。妹が無条件に甘えられる相手は、幼い頃から俺だけだったのだから。

「マナ…ずっとレイと一緒にいてね?約束よ?」
「あぁ、約束する」

ギュッと抱きついてくる妹の頭を撫でながら思う。もう少し胸があれば、さぞかし心地好かったことだろうに…と。残念でならない。


こうして俺と妹の日常が始まる。
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