執着王子と聖なる姫
「もうしないよ。俺が悪かった」
「同じ学校なんですよね?あの人」
「おぉ。同じ学校で同じクラス」
「ずっと一緒じゃないですか」
「そだな。でも、だからって学校は辞めらんねーし、クラスも変えらんねーよ?俺は、お前の服ちゃんとデザインしたくてあのコース選んだんだし」

自分のためだと言われ、聖奈は嬉しさが込み上げる。

今までケンカをしても、愛斗がこうして素直に謝ることは無かった。いつも上手くあしらわれ、結局カフェの時のように話しをすり替えられる。けれど、今の愛斗は違って。それが聖奈には嬉しく、同時に「愛されている」と実感も出来た。

「マナ、あの人のこと好きですか?」
「ん?好きだよ」
「やっぱり…」
「レベッカはお前みたいにいちいち言わなくても何でもわかるし、空気も読める。英語で話せるから楽だし、俺…ブロンド好きなんだよ」

これは別れの言葉だろうか…と、聖奈はキュッと唇か噛んで涙を堪えた。けれどもそれは、愛斗が贈った次の言葉で、我慢の甲斐無く溢れ出すことになった。


「愛してる、聖奈。結婚しよう」


初めて手にした、自分だけの愛情。それを手放すわけにはいかないから、閉じ込めて、縛り付けて、自分だけのものにしておきたいと思う。

歪みに歪んだ愛斗の愛情は、たとえどんな女が言い寄って来ようが聖奈にしか向いてはいなかった。

「どっちがいいか選ばせてやるよ」
「…え?」
「自由になるか、一生俺に縛り付けられるか。お前の好きな方選べ」
「そんなの…」

ポロポロと涙を零しながら、聖奈は顔を上げて愛斗を見つめる。いつもならば余裕の表情を浮かべているはずの愛斗が、今は眉尻を下げてとても情けない表情をしていて。不安にさせてしまった…と、聖奈は聖奈で胸を痛めた。

「そんなの、きかれるまでもありません」
「言えよ」
「セナは一生愛斗のものです」

唇を重ね合う二人は、当然二人だけの世界に浸っていて。大人達がこの場に居ることなど、すっかりこっきり頭の中から消え去っていた。
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