執着王子と聖なる姫
そこにゴホンッと咳払いをしたのが、それを見兼ねたメーシーで。それで漸く現実世界に戻って来た愛斗は、複雑そうな表情をしてガシガシと頭を掻いた。
「あー…ってわけなんで、結婚させてもらってもいいですか?」
こんな状況でよく言えたものだと自分でも思うのだけれど、このタイミングを逃せば言い出せないような気がして。どうせ大人達はそれぞれが溺愛する千彩の妊娠のことでまた一悶着を起こすのだろうから、先にこっちを…と、愛斗なりの考えだ。
「俺の出す条件呑めるなら、いつ籍入れてもええ」
「条件?」
「子供はセナが二十歳過ぎてから。それも、ちゃんと検査した上で大丈夫やってわかってからしかあかん」
「はい。他には?」
「あとは好きにせぇ。こっち住むんやったら俺が、お前ん家住むんやったらメーシーが生活の面倒は見る。結婚式も家出るんも、お前が働き出して生活が安定してからでええ」
「今すぐでも…いいんですか?」
「好きにせぇ言うたやろ。俺は今お前らに構ってる暇は無いんや」
突き放すような晴人の言葉に、裏を読もうとする愛斗と、むぅっと不満げな表情を浮かべる聖奈。それに気付いたメーシーが、ふふふっと笑い声洩らした。
「王子は今姫とbabyのことで頭がいっぱいだからね。勘弁してやってよ」
「いや、俺は助かるけど…」
「セナちゃん、うちに住む?これからこの家は騒々しくなるよ」
「…はい。そうします。よろしくお願いします、お義父さん」
深々と頭を下げる聖奈に「メーシーでいいよ」と笑い、メーシーは二人に歩み寄って愛斗の瞳をじっと見つめた。
「感謝しろよ?俺が先に頭下げてやったんだから」
「え?あぁ…ありがとう」
「泣かせんなよ?」
「わかってるっつーの」
瓜二つな父と息子に挟まれ、聖奈はにっこりと微笑んだ。それを見て、千彩が嬉しそうにペタペタと歩み寄って来る。
「良かったねー、おねーちゃん」
「うっ…セナはお嫁には行きますけど、おねーちゃんにはなりませんよ」
「なんで?」
「ちーちゃんは赤ちゃんを産めないからです」
ハッキリとそう言った聖奈を、「いい加減にしろ」と愛斗が窘める。
「様子見て、それからでも遅くないだろ」
「ちーちゃんにもしものことがあったらどうするんですか?無責任なこと言わないでください」
「だから様子見てっつってんだろ。判断するのは俺達じゃなくて、ちーちゃんの旦那さんのハルさんだ」
むぅっと頬を膨らせた聖奈と、「さすがマナ!」と喜ぶ千彩。それを交互に見ながら、愛斗とメーシーは同時にため息をついた。
「あー…ってわけなんで、結婚させてもらってもいいですか?」
こんな状況でよく言えたものだと自分でも思うのだけれど、このタイミングを逃せば言い出せないような気がして。どうせ大人達はそれぞれが溺愛する千彩の妊娠のことでまた一悶着を起こすのだろうから、先にこっちを…と、愛斗なりの考えだ。
「俺の出す条件呑めるなら、いつ籍入れてもええ」
「条件?」
「子供はセナが二十歳過ぎてから。それも、ちゃんと検査した上で大丈夫やってわかってからしかあかん」
「はい。他には?」
「あとは好きにせぇ。こっち住むんやったら俺が、お前ん家住むんやったらメーシーが生活の面倒は見る。結婚式も家出るんも、お前が働き出して生活が安定してからでええ」
「今すぐでも…いいんですか?」
「好きにせぇ言うたやろ。俺は今お前らに構ってる暇は無いんや」
突き放すような晴人の言葉に、裏を読もうとする愛斗と、むぅっと不満げな表情を浮かべる聖奈。それに気付いたメーシーが、ふふふっと笑い声洩らした。
「王子は今姫とbabyのことで頭がいっぱいだからね。勘弁してやってよ」
「いや、俺は助かるけど…」
「セナちゃん、うちに住む?これからこの家は騒々しくなるよ」
「…はい。そうします。よろしくお願いします、お義父さん」
深々と頭を下げる聖奈に「メーシーでいいよ」と笑い、メーシーは二人に歩み寄って愛斗の瞳をじっと見つめた。
「感謝しろよ?俺が先に頭下げてやったんだから」
「え?あぁ…ありがとう」
「泣かせんなよ?」
「わかってるっつーの」
瓜二つな父と息子に挟まれ、聖奈はにっこりと微笑んだ。それを見て、千彩が嬉しそうにペタペタと歩み寄って来る。
「良かったねー、おねーちゃん」
「うっ…セナはお嫁には行きますけど、おねーちゃんにはなりませんよ」
「なんで?」
「ちーちゃんは赤ちゃんを産めないからです」
ハッキリとそう言った聖奈を、「いい加減にしろ」と愛斗が窘める。
「様子見て、それからでも遅くないだろ」
「ちーちゃんにもしものことがあったらどうするんですか?無責任なこと言わないでください」
「だから様子見てっつってんだろ。判断するのは俺達じゃなくて、ちーちゃんの旦那さんのハルさんだ」
むぅっと頬を膨らせた聖奈と、「さすがマナ!」と喜ぶ千彩。それを交互に見ながら、愛斗とメーシーは同時にため息をついた。