執着王子と聖なる姫
愛斗と聖奈の問題が片付き、戦いは三木夫妻が主体となった。

朝から次々に湧き出す問題にそろそろ疲れてきたメーシーと、「これは口を出すぞ!」と意気込んだ様子の恵介。そんな大人達をダイニングテーブルから眺めながら、愛斗はすっかり落ち着いた聖奈の耳元に唇を寄せた。


「お前、もう逃げらんねーからな。覚悟しろ」


ニヤリと笑う愛斗に、聖奈も負けじと「望むところです!」と返す。この二人はこれで上手くいっている。多少…いや、かなり危ない思考のカップルだけれど、本人達がそれで良いならヨシとしよう。もうツッコむのもしんどい。と、チラリと二人を覗き見ていたメーシーは、無理矢理そう納得することにした。

「千彩、どないしても産むんか?」
「産む!」
「ちーちゃん、考え直してや」
「イヤ!産む!」
「どうしても?」
「どーしても!」

キッパリと言い切る千彩に、晴人はふぅ…と静かに息を吐いて頷いた。

「わかった。ほなまた一緒に頑張ろか」
「いいの!?」

それに目を丸くしたのは、どうしても考え直してほしい恵介で。晴人同様「失うかもしれない恐怖」に怯えた恵介は、二度とそれを味わうまいと必死だ。

それに、親友のあんな姿はもう二度と見たくない。

「晴人!止める言うたやん!」
「恵介、諦めろ。コイツは一回言い出したら聞かん」
「そんなん言うて、もしまたあんなんなったら…!」
「大丈夫や。何とかなる」

これではいつもと逆じゃないか。と、メーシーはぷっと吹き出した。
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