執着王子と聖なる姫
今回の妊娠は、とても順調に進んでいる。悪阻もとても軽く、しかも早くに治まり、千彩の体にも異常は見られない。周りは一安心だと胸を撫で下ろしていた。

これから何も無ければいいけど…と眉をしかめた愛斗に、レベッカがふっと軽い笑い声を洩らす。

「マナはチサが好き」
「わざとらしく言うな」
「love?」
「of course」

レベッカに対しては、ひねくれ者の愛斗でも素直になれる。愛斗自身も驚くほどに、それに嫌悪感を抱くことはなかった。

そして、知り合った頃感じていた聖奈への罪悪感も減った。

「kittyがヤキモチするのもわかる」
「ヤキモチはするんじゃなくて妬くんだよ。それに、何も対象はちーちゃんだけじゃねーよ」

Tシャツの裾を引かれ、レベッカは小さく首を傾げて「me?」と笑った。

「we are friend」
「セナはそう思ってない」
「クビ?」
「いいよ。お前がいなきゃ俺が困る」

勿論、仕事で。と続け、愛斗は本心を隠す。そうしたとてお見通しなレベッカは、ケラケラと笑いながら向かいに位置する自分の机に就いた。

レベッカもレベッカで、抜群のセンスを持ち合わせている。愛斗とはまた別にデザインを任されるほどの腕を持っていた。

「お前何やんの?」
「着物のオシゴト」
「ショー?」
「kittyとLayla」
「そっちも私用かよ」

ガックリと項垂れた愛斗に、レベッカは再び軽快な笑い声を上げた。
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