執着王子と聖なる姫
慌てた愛斗にベリッと剥がされ、レベッカは不満げに唇を尖らせるも、ニヤリと笑って再び愛斗の背にぺたりとひっ付いた。

「やめろ!っつってんの!」
「義理の父親を守るために自己犠牲とは立派ですこと」

うふふっと怪しげに笑うレベッカを振り返り、愛斗は自分の早まった行動に後悔した。


ちゅっ。


そんな音が聞こえ、レベッカがニヤリと笑い、メーシーもニヤリと笑い、千彩は「あーっ!」っと叫んだ。

愛斗はと言うと、あまりに思い切ったレベッカの行動に、目を見開いて体を硬直させていた。

「セナー!マナがレベッカとちゅーした!」
「はいっ!?」

あわわわ…と慌てる千彩と、晴人を押し退けてずんずん突き進んで来る聖奈。それを見てレベッカとメーシーは「ふふふっ」と同時に笑い、愛斗の傍から離れた。

「ふふっ。悪い子だ」
「人助けですよ。ハルトを助けたんです」
「あれじゃマナが大変じゃないか」
「大丈夫。マナはkittyを愛してる」

うふっといたずらっ子の笑みを浮かべるレベッカの髪を一撫でし、メーシーは綺麗に毛先のカールされたブロンドを指に巻き付けた。

「悪い子は嫌い?」
「さて。どうかな」

でも…と続け、三木母娘から自分の姿が見えていないのを確認し、レベッカの唇にそっと口付ける。


「君を綺麗にしたいとは思った。モデルになって俺を専属ヘアメイクにしない?君をNo.1にしてあげるよ」


言葉こそ聞こえないけれど、そんな不埒な様子を遠巻きに見ていた晴人は、大きなため息をついて呟く。

「ここ、職場なんやけど…」と。
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