執着王子と聖なる姫
三井志保。

メーシーより一つ年上で、同じく高校を卒業してから東京へ出てきた幼なじみ。マリも志保もお互いを知っているけれど、交流は無い。

それくらいの情報しかないけれど、愛斗はとある理由から志保に好感を抱いていた。

「カレーあるよ。食べる?」
「んじゃ、二人分」
「はーい」

青山にひっそりと在るこのカフェが、愛斗のお気に入りだ。一人で外に出る時は、決まってここを愛用している。今日は特別に二人だけれど。


「やっぱここに居たか」


そしてここには、メーシーも訪れる。

「あっ、アキちゃんいらっしゃい」
「志保、カレーある?」
「あるよ。座って」

二人と同じようにカウンターに並び、メーシーは出された水をグイッと飲み干した。

「おかわり要る?」
「言わなくてもわかれよ」
「あらー。今日はいつもに増してお疲れだね」
「色々あんだよ。呑気に生きてる志保にはわかんない色々、が」
「相変わらず棘ばっか」
「うっせーよ」

カチリとタバコに火を点けたメーシーに、隣に座るレベッカは興味津々だ。それに気付き、メーシーは目を細めてふぅっと反対方向に煙を吐き出した。

「フェミニストじゃなくてガッカリした?」
「ううん。そこも素敵」

どこまでもアダルトキラーなレベッカは、隣に座るそっくりな顔の愛斗には目もくれず、ただただタバコを吸うメーシーを見つめて喜んでいる。
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