執着王子と聖なる姫
「マナとはどうゆう関係?」
「マナ?」

細いストローを咥えながら、レベッカは大きな目をきょろりと動かす。

「we are friend」
「ふぅん」
「信じてないって顔してる」

愛斗のことは、高校時代から知っていた。
けれど、メーシーのことはもっと昔から知っている。

愛斗自身に興味があったわけではなく、「メーシーそっくりの顔をした愛斗」にレベッカは興味があったのだ。それは今のところ、愛斗にしかバレていない事実だけれど。

「マナはいいお友達デース」
「それにしては親密そうだけど」
「気持ちがわかるデスヨ。コレのおかげで」

トントンと自分の左目の下当たりを指で叩き、レベッカは苦笑いをする。

「綺麗な瞳だ」
「でしょう?でも、マナは自分の瞳が大嫌い」
「あぁ…そうだね」

決して隠すことはしないけれど、愛斗がそれを嫌っていることはメーシーも知っている。


― ママはマナがキライ ―


血の滲む涙を流しながらそう言った幼き日の息子の姿が、メーシーは未だに忘れられない。

「俺は好きなんだけどな、あの瞳」
「じゃあ、私のことも好き?」

うふふっと笑うレベッカに「参ったなー」と応え、メーシーはポケットから小さな瓶を取り出した。

「あげる」
「これ…マニキュア?」
「グロス。変わった形だろ?」
「これがグロス?綺麗なビン」

繊細な彫刻が施された小瓶には、パッションオレンジの液体が詰まっている。

志保が欲しいと言っていたから持ってきたのだけれど、考えてみれば自分よりも年上の志保には少し派手な色味だ。若くて色白のレベッカの方がよく似合う。
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