執着王子と聖なる姫
「早く落ちてくれないかな」
「もうすぐだろ。さっさとデザイン画描け」
「来週から海外に行くって言ってた」
「聞いてねーよ、俺」
「愛人に会いに行くのかな?」

レベッカの言葉に宙を睨み、愛斗はふっと笑い声を洩らした。

「ねぇな」
「だろうね。MEIJIはマリコを愛してる」
「悔しいか?」
「まさか」

ペンを滑らせながら、レベッカは緩く笑う。それを正面に見ながら、愛斗は小さな箱を引き出しから取出し、レベッカの前へと滑らせた。

「やる」
「口止め料?」
「バーカ」

箱を開くと、そこにはアイスブルーの石が付いた対のピアスが並んでいる。それにゆるりと目を細め、レベッカはコツンと指先でそれを弾いた。

「アクアマリンは、確か三月の誕生石だったと思ったけど」
「さぁな。でも、お前の瞳と同じ色だ」
「さすがMEIJIの息子」
「うっせー」

ケラケラと笑うレベッカに、愛斗も笑いながら反論する。これが聖奈の不安と不満の理由なのだとはわかっているのだけれど、愛斗にそれを断ち切る気は更々無い。

二人だけの空間で一日数時間を共に過ごし、それぞれに作品を作り出す。愛斗にとってレベッカと過ごす時間は、秘密の時間だった。
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