執着王子と聖なる姫
母親同士はまだいい。うちはあの通りだし、ちーちゃんも「あららー」と言って笑っていそうだ。けれど、それだけでは済まない。父はヨシとして、ハルさんと…妹が面倒くさい。とてつもなく。想像するだけで、眩暈を起こしそうなくらい。
「お前は黙ってろ」
「どうしてですか?」
「マリーにもちーちゃんにも俺が説明する」
「どうしてですか?」
「いいか?何も喋るなよ?」
「どうしてですか!」
ポカンと俺の胸を叩き、頬を膨らせたセナが抗議する。
どうやらコイツは、自分の疑問が解決しないと嫌なタイプらしい。中途半端で呑み込むということが嫌いなのか、それともただのバカなのか。汲むとか悟るとか、おそらくそんな単語はコイツには無縁のものだろう。
「俺達だけの秘密にしよう」
こうゆう時、父に似て良かったと思う。顔もそうだけれど、するりとそんな言葉が出てくる。父は「フェミニスト」と言うよりも、「天然タラシ」だと俺は思っている。あれに優しく微笑まれて、その気にならない女はいないだろう。
そう、目の前のこの女のように…って。え?
「え、何?俺の話聞いてる?お前」
徐に伸ばされた指先が、俺の瞼をするりと撫ぜる。しかも、右目を。
「ここに傷がある。お兄ちゃん、怪我をしたんですか?」
「ああ、小さい時にな」
「何で怪我をしたんですか?」
「自分でやった」
「どうしてですか?」
「…いいだろ、別に」
「どうしてですか?」
ダメだ。これは答えるまでしつこく「どうしてですか?」と食い下がられる。諦めてふぅっと息を吐くと、片手でセナの両目を隠す。
「また今度教えてやる」
「いつですか?」
「いつか」
「いつかはダメです」
「じゃ、セナが俺のこと大好きになったら」
「それなら今教えてください」
「即答だな、おい」
グイッと手を押し退けられ、黒目がちの意思の強そうな瞳が俺を見つめる。
「大好きな人とキスをするのは気持ち良い。セナはお兄ちゃんとキスをして気持ち良いと思いました。それ即ち、お兄ちゃんが大好きだということです」
何か小難しいことを言っているような気がするが、要はこれは告白だろうか?いや、こんな告白は嫌だ。
「お前は黙ってろ」
「どうしてですか?」
「マリーにもちーちゃんにも俺が説明する」
「どうしてですか?」
「いいか?何も喋るなよ?」
「どうしてですか!」
ポカンと俺の胸を叩き、頬を膨らせたセナが抗議する。
どうやらコイツは、自分の疑問が解決しないと嫌なタイプらしい。中途半端で呑み込むということが嫌いなのか、それともただのバカなのか。汲むとか悟るとか、おそらくそんな単語はコイツには無縁のものだろう。
「俺達だけの秘密にしよう」
こうゆう時、父に似て良かったと思う。顔もそうだけれど、するりとそんな言葉が出てくる。父は「フェミニスト」と言うよりも、「天然タラシ」だと俺は思っている。あれに優しく微笑まれて、その気にならない女はいないだろう。
そう、目の前のこの女のように…って。え?
「え、何?俺の話聞いてる?お前」
徐に伸ばされた指先が、俺の瞼をするりと撫ぜる。しかも、右目を。
「ここに傷がある。お兄ちゃん、怪我をしたんですか?」
「ああ、小さい時にな」
「何で怪我をしたんですか?」
「自分でやった」
「どうしてですか?」
「…いいだろ、別に」
「どうしてですか?」
ダメだ。これは答えるまでしつこく「どうしてですか?」と食い下がられる。諦めてふぅっと息を吐くと、片手でセナの両目を隠す。
「また今度教えてやる」
「いつですか?」
「いつか」
「いつかはダメです」
「じゃ、セナが俺のこと大好きになったら」
「それなら今教えてください」
「即答だな、おい」
グイッと手を押し退けられ、黒目がちの意思の強そうな瞳が俺を見つめる。
「大好きな人とキスをするのは気持ち良い。セナはお兄ちゃんとキスをして気持ち良いと思いました。それ即ち、お兄ちゃんが大好きだということです」
何か小難しいことを言っているような気がするが、要はこれは告白だろうか?いや、こんな告白は嫌だ。