執着王子と聖なる姫
「今さ、お前のドレスのデザインしてんだ」
「ドレス…ですか?」
「そっ。お前が結婚式で着るやつ」

髪を撫でる愛斗を見上げ、聖奈は申し訳なさそうに眉尻を下げる。それに何かを感じ取った愛斗は、優しく目を細めて足を進めた。

「せっかくなんですけど…着たいドレスがあるんです」
「え?そんなのあるなら早く言えよ」

もう大方出来上がってるのに…と不満げな愛斗の手を握り、聖奈は俯いた。

「…たいん…です」
「え?何?」

歩きながら、しかも俯いて呟いた聖奈の声は、二人分の足音に掻き消された。


「ちーちゃんの着たウェディングドレスが着たいんです。ダメですか?」


今度はしっかりと顔を上げて言う聖奈に、愛斗はふっと笑い声を洩らした。

「何でお前はいっつも「ダメですか?」って言うかねー」
「だって…」
「サイズはケイさんに直してもらえよ?俺の専門はデザインだからな」
「いいんですか?」

ぴたりと足を止めた聖奈の手を引き、意地悪な悪魔が笑った。

「ダメだっつったら?」
「それなら…」
「俺と結婚すんのやめるか?」

そんな意地の悪い一言でビクンと肩を揺らす聖奈は、心底愛斗に惚れていて。愛斗のためならば死んでもいいとさえ思うほどに惚れに惚れ込んでいるのだから、そんなことに首を縦に振るはずがない。

それを愛斗は知っている。

「レベッカの方がいいですか?」
「かもなー」
「どこがいいんですか?ブロンドだからですか?背が高いからですか?セクシーだからですか?」
「ふっ。お前バカだろ」

あはははっ。と笑い声を上げながら、愛斗は愛しい小さな体を腕に抱く。

「お前はバカだねー」
「真面目に話をしてるのに!」
「それがバカだって言ってんだよ」

腰を屈めて視線を合わせ、そのまま口付けた。
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