執着王子と聖なる姫
「とりあえずお兄ちゃんって呼ぶのやめろ。俺はお前のbrotherじゃねーよ」
「では、名前を教えてください。セナの名前は三木聖奈です」
「は?お前俺の名前知らねーの?」
「知りません」
「あっそ。愛斗、これが俺の名前」
「何て呼べばいいですか?」
「マナって呼べばいいさ。皆そう呼ぶ」
「では、マナ。教えてください」

しつこい、この女。絶対引かなさそうなタイプだ。

嗚呼…マリーと似た意味で、タイプの違う面倒くさい系だ。親子だからだろうか。これが父から受け継いだ血なのだろうか。

「俺がお前を大好きになったら教えてやる」
「いつですか?」
「わかりません」
「マナは気持ち良くなかったですか?」
「わかりません」
「ズルイ!」
「ズルくねーよ」


だから、それまで俺達だけの秘密な?


頬を真っ赤に染めたセナの手を引いて、三駅戻って家路に着く。チャイムを鳴らすと、バタバタと二人分の足音がリビングから駆けて来た。

「Mana!What's happen!?」
「それがさ…」

約束した通り、セナは一言も喋らなかった。そう、一言も。だから余計に「痴漢に遭って怖がっていた」という理由が真実味を増した。

嘘ではない。
「痴漢に遭った」というところまでは。

そこから先は、オロオロとしながらハルさんに電話をかけるちーちゃんを前には、到底言えなかった。

後でこっそりメーシーだけには話そう。そう決めた。
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