執着王子と聖なる姫
「話したんだ、志保のこと」
「おぉ」
「泣かれてさ、困ったよ」
「せやかて…ただの幼なじみなんやろ?志保さんとは」
「そうなんだけどさ。学生時代にちょっとあって」
「ふぅん」
幼なじみの志保とは、学年は違えど中・高と同じ学校で共に過ごした。
その頃からマリは志保に対して良い印象を持っていないのだ。
「何だろなぁ…何て言ったらいいんだろ」
「今更何聞いても、別に驚きやせんけど?」
「だね。志保はさ、俺にとったら母親みたいな存在なんだよ」
「姉貴やなくて?」
「うん。母親」
父を早くに亡くしたメーシーは、母の愛情を一身に受けて育った。それが息子の「歪み」の原因になったことも、息子が歪んでいることさえも気付かずに、母はただただ愛しい息子に過剰な「愛情」と「期待」をかけて育てたのだ。
「本当の母親には、最後の最後まで本音は言えなかった」
「でも、志保さんには言えた…と」
「そもそもさ、俺に「外面」なんて面倒なものを教えたのは、志保だったからね」
「へぇ…ごっつ当たり障りなさそうな人やのにな」
「とんでもない!魔女だよ、あの女は!」
力一杯否定するメーシーを鼻で笑い、その手から晴人はファイルを奪い取る。そして、自分が撮ったマリの写真にうっとりとした目を向けた。
「俺さぁ、コイツ見た時マジで落としたい思うたんや」
「言ってたね。良かったじゃないか。結果、撮れたし、恋人気分も味わえたし」
「相変わらず嫌味な奴やな」
「お互い様だろ?」
第一印象は、互いに「最悪」だった。
それが一度仕事で組んでみると、その後離れられなくなるほどにやり易くて。そこに恵介を加えた三人で、この青山事務所の歴史を華々しく飾ってきた。
「まさかさ、自分が19のガキ相手にグラつくなんてね」
「また嫌味か?悪かったな。17のガキ拾うてきたロリコン男で」
「そこまで言ってないだろ」
「目が言うとる、その目が」
どんな時でも本心を映さないその目が、晴人は苦手だった。
同じようにメーシーも、いつでも心の内を見透かしたような晴人の目が苦手だった。
「おぉ」
「泣かれてさ、困ったよ」
「せやかて…ただの幼なじみなんやろ?志保さんとは」
「そうなんだけどさ。学生時代にちょっとあって」
「ふぅん」
幼なじみの志保とは、学年は違えど中・高と同じ学校で共に過ごした。
その頃からマリは志保に対して良い印象を持っていないのだ。
「何だろなぁ…何て言ったらいいんだろ」
「今更何聞いても、別に驚きやせんけど?」
「だね。志保はさ、俺にとったら母親みたいな存在なんだよ」
「姉貴やなくて?」
「うん。母親」
父を早くに亡くしたメーシーは、母の愛情を一身に受けて育った。それが息子の「歪み」の原因になったことも、息子が歪んでいることさえも気付かずに、母はただただ愛しい息子に過剰な「愛情」と「期待」をかけて育てたのだ。
「本当の母親には、最後の最後まで本音は言えなかった」
「でも、志保さんには言えた…と」
「そもそもさ、俺に「外面」なんて面倒なものを教えたのは、志保だったからね」
「へぇ…ごっつ当たり障りなさそうな人やのにな」
「とんでもない!魔女だよ、あの女は!」
力一杯否定するメーシーを鼻で笑い、その手から晴人はファイルを奪い取る。そして、自分が撮ったマリの写真にうっとりとした目を向けた。
「俺さぁ、コイツ見た時マジで落としたい思うたんや」
「言ってたね。良かったじゃないか。結果、撮れたし、恋人気分も味わえたし」
「相変わらず嫌味な奴やな」
「お互い様だろ?」
第一印象は、互いに「最悪」だった。
それが一度仕事で組んでみると、その後離れられなくなるほどにやり易くて。そこに恵介を加えた三人で、この青山事務所の歴史を華々しく飾ってきた。
「まさかさ、自分が19のガキ相手にグラつくなんてね」
「また嫌味か?悪かったな。17のガキ拾うてきたロリコン男で」
「そこまで言ってないだろ」
「目が言うとる、その目が」
どんな時でも本心を映さないその目が、晴人は苦手だった。
同じようにメーシーも、いつでも心の内を見透かしたような晴人の目が苦手だった。