執着王子と聖なる姫
色々とあったけれど、それでもお互いがお互いを必要としているのだ。
「レベッカ、平気だった?」
「気になるんやったら様子見に行けば?」
「どうせマナがいるんだろ?」
「うちのお婿様は恐ろしいからなぁ」
「誰に似たんだかねー、ホント」
ふふっと軽く笑うメーシーは、紛うことなく愛斗の父親で。年齢を重ねるにつれ容姿どころか内面まで自分に似てくる息子に、妙な安心感を感じていた。
「正直さ、王子の子だったらどうしようかって思ってたんだ」
「せやから、何回もそれは無い言うたやん」
「ホントはさ、あの頃からもうピル止めてたんだよ」
「はぁっ!?怖っ!あの女恐ろしっ!」
「今だから言えるんだ。マナがあれだけ俺に似てくれてるから」
真っ直ぐに晴人の目を見つめ、メーシーは申し訳なさげに眉尻を下げる。
「堕ろしてくれって言ったんだ、俺。結婚は予定通りにする。だけど子供は堕ろしてほしいって。最低な父親だよ」
「いや、だって…あいつが妊娠したん、俺が千彩と知り合うてからやん」
「どこかで疑ってた。怖かったんだ、俺も」
いつだって、マリと離れたくなかったのは自分だった。
「こっちに居た頃さ、マナは麻理子より姫に懐いてただろ?」
「あぁ、せやな」
「それが怖くて堪らなかった。王子の子だから、こんなにも懐いてるんじゃないかって。だからNYに逃げた」
「それで…か」
「今更だけどさ。こんなこと」
突然NY行きを希望したメーシーに、晴人も恵介も敢えて何も訊ねなかった。
笑って酒を飲み、夜を明かし、そして4人を見送ったのはもう10年以上前の話だ。
「悪かったよ、黙ってて」
「いや、別にええけどやな」
「ほら、こうゆうのはさ、言える時に言っちゃわないと」
「まぁ…せやな」
照れくさそうに視線を逸らしたのは、聞かされた側の晴人で。どうもこうゆう空気は慣れない。と、ガシガシと頭を掻いてファイルをメーシーに押し付けた。
「大事にしたれよ、嫁」
「言われなくても。そっちこそ」
笑い合う二人の間に、昨日までの刺々しさはもう無い。それどころか、今まで以上に穏やかな時間が流れていた。
「レベッカ、平気だった?」
「気になるんやったら様子見に行けば?」
「どうせマナがいるんだろ?」
「うちのお婿様は恐ろしいからなぁ」
「誰に似たんだかねー、ホント」
ふふっと軽く笑うメーシーは、紛うことなく愛斗の父親で。年齢を重ねるにつれ容姿どころか内面まで自分に似てくる息子に、妙な安心感を感じていた。
「正直さ、王子の子だったらどうしようかって思ってたんだ」
「せやから、何回もそれは無い言うたやん」
「ホントはさ、あの頃からもうピル止めてたんだよ」
「はぁっ!?怖っ!あの女恐ろしっ!」
「今だから言えるんだ。マナがあれだけ俺に似てくれてるから」
真っ直ぐに晴人の目を見つめ、メーシーは申し訳なさげに眉尻を下げる。
「堕ろしてくれって言ったんだ、俺。結婚は予定通りにする。だけど子供は堕ろしてほしいって。最低な父親だよ」
「いや、だって…あいつが妊娠したん、俺が千彩と知り合うてからやん」
「どこかで疑ってた。怖かったんだ、俺も」
いつだって、マリと離れたくなかったのは自分だった。
「こっちに居た頃さ、マナは麻理子より姫に懐いてただろ?」
「あぁ、せやな」
「それが怖くて堪らなかった。王子の子だから、こんなにも懐いてるんじゃないかって。だからNYに逃げた」
「それで…か」
「今更だけどさ。こんなこと」
突然NY行きを希望したメーシーに、晴人も恵介も敢えて何も訊ねなかった。
笑って酒を飲み、夜を明かし、そして4人を見送ったのはもう10年以上前の話だ。
「悪かったよ、黙ってて」
「いや、別にええけどやな」
「ほら、こうゆうのはさ、言える時に言っちゃわないと」
「まぁ…せやな」
照れくさそうに視線を逸らしたのは、聞かされた側の晴人で。どうもこうゆう空気は慣れない。と、ガシガシと頭を掻いてファイルをメーシーに押し付けた。
「大事にしたれよ、嫁」
「言われなくても。そっちこそ」
笑い合う二人の間に、昨日までの刺々しさはもう無い。それどころか、今まで以上に穏やかな時間が流れていた。