執着王子と聖なる姫
「どっか行くの?」
「ん?レイをスタジオに連れてくんだよ」
「は?あいつ学校は?」
「行きたくないんだって。だからモデルでもやらせてみようかと思って」
「…甘やかすなっつーの」

俺任せにしてるからだよ。と、ため息もつきたくなる。
こういった時の対処法を知らないのだ。両親共に。

残念だ。実に残念な両親だ。

「そもそも、あいつにモデルなんて務まんのかよ」
「あれだけママに似てるんだから申し分ないと思うけど?」
「言ってろ、マリー馬鹿。あいつチビじゃん。モデルって身長要るんじゃねーの?あっ、キッズモデル?」
「失礼だなぁ、マナは。ショーモデルじゃなきゃ身長なんて何とでもなるよ」
「へぇー」

俺にはその辺りのことは詳しくわからない。し、興味も無い。俺も子供の頃に何度かモデルをやらされたけれど、あんな着せ替え人形みたいなことはもうこりごりだ。

「ホントはマナをモデルにしたいんだけどね、俺は」
「ヤダよ」
「言うと思った。残念だなー。マナは顔もスタイルも最高にモデル向きなのに」
「何それ。自分褒めてんの?」

瓜二つだと言われるほどに似ている息子を褒めるということは、自分を褒めているということだ。

どこまでも痛い親なんだ、うちの親は。よくこんな親から生まれて、まともに育ったものだ。よくやった、俺。

「どうしてマナはモデルになるのが嫌なんですか?」

目玉焼きを頬張る俺を、真正面からじっと覗き込むセナ。

ほら来た。どうしてですか?攻撃だ。

「俺はああゆうの好きじゃねーの」
「どうしてですか?」
「どうしてって言われてもねー」

ひょいっとブロッコリーを押し込むと、攻撃は止んだ。まぁ、喋れないから当然か。
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