執着王子と聖なる姫
「嫌いだ」
「どうしてですか?」
「ほら来た。セナのどうしてですか攻撃」

純粋だからだと言えばそうなのだろうけれど、これは少しばかり面倒くさい。

「物事には、必ず理由があります」
「じゃ、お前は何で俺の目が好きなわけ?」
「綺麗です」
「色が片方だけ違って珍しいからだろ」

わかってる。八つ当たりだと。コイツに八つ当たりしたところで、この瞳の色は変わらないと。

けれど…


「お前にはわからない」


振り解いた手が、頼り無く宙を舞った。ふわり…と、ゆっくりと。

次の瞬間、グッと手首に圧力がかかる。思いもよらない強い力で。

「マナはおバカさんです!」

震えた唇が、ギュッと噛み締められた。ドスンと胸に衝撃が走る。
頭突き…いや、体当たりか、これは。

「ちょっ…セナ、おい」
「きちんと話を聞いて、相手に自分の気持ちを伝えなければならない。と、ちーちゃんがメーシーに教わったと言ってました」
「は?」
「マナはセナの話を聞いてくれません。それに、マナは何も伝えてくれません。わからないセナが悪いのではなくて、マナが悪いです!」

泣いていると思っていた。妹ならば、まず間違い無く泣いている。そう、手を振り解かれた時点で既に。
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